レイモンド・カーヴァーの「ビギナーズ」は、ある意味恐ろしい本だ。
短編集出版のために、作家の書いた原稿を、編集者がみずからカットして出したのが「愛について語るときに我々の語ること」。
「ビギナーズ」は、作家が書いた最初の原稿を、出来る限り復元したものだ。
訳者(ムラカミだが)の解説によれば、60%、70%カットがざらである。
編集者の作業のいきさつは省略するが、ぼくらはもともと、ばさばさに切られた作品に接して衝撃を受けたわけだし、それらの作業が作品の価値を落としているとは思えない。
元の原稿を読むと、全体の背景がよくわかってくることは確かだが、なくてもいいような気もするから不思議だ。
でも。
ボクのようなわかっていない人間が、あれこれ言うのはどうかと思うので、これ以上書かないけれど、作家と編集者の幸福な共同作業というものに、なんとなくあこがれを感じていた者としては、作家の側からのこの検証には、驚きを感じえない。
結局のところ、作家は自分で書き、編集者は自分で編集する、ということだ。